1日だけのいじめの話

中学時代の話。
当時不登校だった私は小学校からの友人Aを通してクラスメイトのМと知り合った。Мとはすぐ打ち解けて仲良くなったものの、Aとの関係には変化があった。
私がМと仲良くすると、張り合うようにAもМと仲良くするようになった。
小中学生にありがちな友達に対する独占欲のようなものだったけど、今思えば明らかにやりすぎだった。
メール、家に行く、手紙のやりとり、遊びに行く、全てにおいて張り合ってた。依存してたんだと思う。Мに、それとМを通してAに。
とにかく、昼ドラかってくらい常に張り合って、でもAとはずっと仲良くしてた(少なくとも私はそのつもりだった)。

そうしてヒートアップしていく中、中学の卒業式直前に私にとっての大事件が起こった。
その頃はもう不登校を克服して普通に登校していた私が朝学校に行くと、私の机が倒され中身は散乱。何事か分からなかったけど、とにかく平静を装って机と中身を元に戻した。他のクラスメイトは遠巻きに見てたと思う。
居たたまれなくなってすぐに隣のクラスのAのところに行って予鈴まで話してた。予鈴が鳴って教室に戻ると、また同じ光景。同じことをされてた。
また元に戻して平然と席についたけど、内心はパニックだった。パニックだったけど犯人だけは見当がついてた。Мの幼馴染Sだ。
Sはとにかく私とAのことを嫌っていて、特に同じクラスの私には当たりがキツかった。今思うとМが私達のことに困って相談してたのかな。
Sはいつも小さな嫌がらせをしてきてたし、今日はキツいな~と思い直して授業を受けてた。

卒業式直前なので授業は少なく一日のほとんどは予行演習。その日も体育館に向かおうとしたけど、体育館シューズがない。
ゴミ箱に捨てられてた。チョークの粉塗れで。この時も平静を装ってチョークを払い、カラフルな体育館シューズを持って体育館に向かった。
歌の練習の時、後ろから「声出すなや」「耳腐るわ」振り返ると案の定S。そして驚くことにМも私の悪口を大声で言っていた。

衝撃を受けつつも練習を終え教室に戻ると、今度は筆箱がない。先に戻った二人に隠されたのかと思っていたら、廊下の隅で発見された。中身のペン類やつけてたキーホルダーはバキバキ。多分踏み付けたんだと思う。筆箱を持って教室に帰ると二人はニヤニヤ。
ここまで来るともう意地みたいなもので、傷ついた顔なんて絶対するもんかととにかく平静を装った。そのときは実際に平気だと感じていた。

でも一人で帰り道を歩いているうちに悔しさとか悲しさとかが込み上げてきて、泣きながら帰った。一日の間にこんなにもいろんなことが起こって、しかも相手は大好きだった友達で、混乱してたんだと思う。
元々不登校だったこともあって友達は少なくクラスメイトも遠巻きで孤立気味だったけど、ドラマや漫画で見るようないじめは初めてで、もう何もかも通り越して笑いたいような気持ちでもあった。

家に帰って母に今日あったことを洗いざらい全部話すと、母はすごく怒った。学校に電話をして、相手の子に話を聞いてくださいと言ってくれた。
思えば当時体調が悪くほとんど外にも出られなかった母が、よくあそこまで動いてくれたなと思う。
学校はすぐにMとSの二人を呼び出して話を聞いてくれたようで、その後M本人からは謝罪の電話があった。謝罪というか、「筆箱とペンは弁償します。いくらですか?」みたいな内容だった気がする。それしか覚えてない。Sからは何の連絡も謝罪もなかった。

当然その後Mとは付き合いがなくなったが、Aとも気まずくなってしまった。Aは当初、小学校からの付き合いの私と大好きなM、どちらにつくか迷っていた様子だった。どちらにつくというのもおかしな話だったけど、当時は二択しかないと私もAも思っていたんだと思う。

高校は地元から少し離れていて、幸いほとんど知り合いもおらず楽しく高校生活を送った。

高校生になって半年くらい経ったある日、突然Mから電話があった。正直中学生のころのことは忘れかけていたし、Mに未練も恨みもほとんどなかった。
連絡してきたMは「会って話がしたい」と言った。当然迷ったし、何で今更、と思った。でも何故か、会いに行った。まだ未練があったのかもしれない。
待ち合わせ場所の公園で、Mは私に謝った。あの時は私とAの二人に板挟みにされて、疲れていた。Sに乗せられてあんなことをしてしまったけど、もう一度友達になってほしい、と。
すごく迷った。一度は裏切られて、もう一度裏切られない確証もない。なのに私は、了承してしまった。こうして私とMは友達に戻った。



親友の話 に続きます